4月に読んだ本

4月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:3027
ナイス数:561

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂ふしぎ駄菓子屋 銭天堂感想
小4の姪っ子へお誕生日にあげたうちの1冊。面白かったよ!と貸してくれたので、さっそく読んでみる。ふしぎな駄菓子屋〈銭天堂〉で売られているのは、買う人の願望を叶える奇妙なお菓子。ただし用法用量を間違うと大変なことにー、という趣向の掌編が7つ。どれもSS並の短さながら、おっと思わせる展開が楽しい。銭天堂おかみの紅子さんも存在感抜群で、大人読者としては、お客に大人も含まれていることが嬉しい。印象的だったのは6話目の「クッキングツリー」、子どもに向けて書かれた母親からの虐待にドキリとする。
読了日:04月01日 著者:廣嶋 玲子

先祖の話先祖の話感想
仏は仏陀を指す以前にまずホトケという言葉があり、古来よりそれは死者を意味したと柳田は言うが、後世GODに神の字をあてたのと同じくらい、これは語弊を招くまずい選択だったと思う。正月に祭る歳神の本来の姿を考証し、盆との対応や春分秋分との関連から、古来よりの祖霊信仰のあり方をあぶり出す。ご先祖様と聞いて思い浮かぶのはお仏壇にあった古い写真で、そこには知覧から特攻して玉砕した若き大叔父の顔があった。終戦間近の頃、柳田はまさに彼らのために本書を物したのだ。大きな震災を経験したいま、その慰霊鎮魂への熱情が胸に迫る。
読了日:04月06日 著者:柳田 國男

魔女ジェニファとわたし (岩波少年文庫)魔女ジェニファとわたし (岩波少年文庫)感想
3冊目のカニグズバーグ。クローディアやエリコに比べて本作はややシンプルに感じたけれど、読後の爽快感は変わらない。幼いころエリザベスと同じく〈魔女ごっこ〉に夢中だった私は、ジェニファのように謎めいて魅力的な友達が欲しかった。けれど私の相棒はある日言ったのだ「ぜんぶ嘘なんでしょう」。ジェニファのカリスマ性が万分の一でも私にあれば、エリザベスの純真さが百分の一でも彼女にあれば、あの遊びはどう展開しどう収束しただろう。けれど本当になりたかったものは魔女などではなく、どんなに陳腐だろうと結局のところ〈それ〉なのだ。
読了日:04月09日 著者:E.L. カニグズバーグ

少女たちの19世紀――人魚姫からアリスまで少女たちの19世紀――人魚姫からアリスまで感想
自由な尾ヒレを捨てて痛む脚を手に入れた人魚姫。原作では男装していた姫の行動力、けれど男性社会で歩く自由を手に入れた彼女は、弱音を吐くための声を持たない。美しい歌声で船人を惑わすセイレーン、彼女もその種族の一人であったのに。最期は望み潰え泡と消えた姫。けれど彼女が本当に望んだのは王子の隣の席ではなく、王子の持つ自由さそのものではなかったか。その王子が選んだ王女は美しく優しい女性だが、完全無欠のカップルに漂うこの空虚感はなにゆえか。魂を持たないはずの水妖が体現してみせる、19世紀の少女たちの夢と憧れ。
読了日:04月12日 著者:脇 明子

いまはむかしいまはむかし感想
楽しかったー!かぐや姫がツクヨミの娘というさわりが気になりつつも、ソフトカバー+イラスト表紙を警戒して手を出さなかったのだけど、読んでみれば意外なほど摩擦の少ないしっかりとした文章で、あっという間に読み終えちゃった。もっと詰めてほしい深みを見たいと思わせる部分、定形に流れて惜しいと思わせる部分はあったけれど、王道な展開も美味しく全体に好印象でした。十代で読めていたら、勾玉三部作に次ぐ愛読書になっていたかも。好みど真ん中で嬉しい出会いでした。若返るわあ。
読了日:04月14日 著者:安澄加奈

はるか遠く、彼方の君へはるか遠く、彼方の君へ感想
源平合戦末期にタイムスリップした3人の高校生、現代に戻る鍵は三種の神器。義経×時間旅行×神器探し、あまりの王道ネタ盛り合わせに鼻白む。けれど作者らしい堅実な文章を追ううちに、硬化のあげく崩壊しかけていた夕鷹の心がゆるやかにほどけてゆくさま、一途に弓を引く先で淡い恋を芽吹かせる華月の初々しさ、病床の美弥姫と心を重ねる中で真の強さ優しさを身につけていく遠矢の姿に、いつの間にか一喜一憂していた。物語はまだ詰められる、深められる、それを見たいのにと歯噛みしながらも、読み終えた時には爽やかな満足感がありました。
読了日:04月17日 著者:安澄 加奈

かがみの孤城かがみの孤城感想
本書を、不登校の当事者である子はどう読むのだろう。こころたちの辛さが身に迫ってくるほど作者の残酷さを思う。登場人物達にいくら我が身を重ねても、本を閉じればあるのは変わらぬ現実だけ。鏡の城に招かれる幸運は実際にはありえない。彼らの苦しみをたかが読書で理解した気にならぬよう身構えながら、一進一退を繰り返しつつ距離を縮めていくさまを息を詰めて見守る。そうして間もなく気付いたことは、これは断じて残酷な話などではないということ。祈るようなこころの闘いとそれがもたらした救済の環は、世界は一つではないというメッセージ。
読了日:04月20日 著者:辻村 深月

夢も定かに夢も定かに感想
新参者のみそっかす若子、男勝りの才媛笠女、魔性の美貌春世。奈良時代の後宮を舞台にした采女たちの物語。采女メインも珍しければ、地方豪族出身の彼女たちと対照的に畿内豪族を出自とする女官、氏女についても描かれた作品はとても珍しいように思う。首帝(聖武天皇)の御世、長屋王や藤原四兄弟も登場するが、あくまで筆は働く女性である采女たちの生活を追う。当初、舞台を古代に移しただけで内容は現代モノと変わらないのではと鼻白んだが、読み進めるにつれ彼女たちが置かれた特殊な立ち位置(妾妃候補兼女官)の内情が見えてきて面白かった。
読了日:04月23日 著者:澤田 瞳子

西鶴名作選―現代訳 (1984年)西鶴名作選―現代訳 (1984年)感想
好色五人女、好色一代女、日本永代蔵、世間胸算用より数篇ずつ、現代語訳のみ。地元図書館では選ぶ余地なく借りた本だが、歯切れのよい訳文が読みやすく、大変面白く読了した。駆け落ちや姦通などの恋愛事件を扱う五人女では、詳細を知らずにいたお夏・清十郎の顛末を読めたことが嬉しい。一代女は色道に生きた女性の回顧録。永代蔵と胸算用は町人たちの懐事情を書いたもので、節季ごとの掛け回収や年越し準備など、事細かに描出された江戸の人々の生活風俗が興味深い。日本商人は不誠実で中国商人は実直だというくだりが印象的で、偏見を恥じた。
読了日:04月26日 著者:井原 西鶴

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