7月に読んだ本
7月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:406
ナイス数:374
縄文の神の感想
稲作ー製鉄ー戦争の三点セットが登場する以前、石器時代の人々の精神性の高さには、中沢新一「カイエ・ソバージュ」以来あこがれを持っている。時代区分は違えどそこに重なる縄文の素朴で気高い精霊信仰が、どのように命脈を繋いできたかを、ヒモロギ、イワクラ、カンナビ、コトダマ、ムスヒの章立てで語る。なにぶん文字のない時代のことなので、読み味としては論考というよりも随筆に近い上に、自著の引用めちゃ多い。けれども目を惹かれる部分もあり、例えば食物神と殺害の関係性から、土偶は破壊されてこそ呪術が成る、という考察には納得する。
読了日:07月03日 著者:戸矢 学
へんないきものすいぞくかん ナゾの1日の感想
【3歳10ヶ月】飼育種数日本一の鳥羽水族館、そこの〈へんないきもの研究所〉がお送りする写真絵本。奇想天外な生き物たちは写真で見るだけでもおもしろいけれど、本書はさらに読み手を楽しませる工夫がちりばめられていて、繰り返し捲りたくなる。ダイオウグソクムシが持て囃された時は横目で見過ごしていたけれど、5年間も絶食し、食事や排泄がニュースになるその生態を知ると、途端に愛しさが湧いてくる。お気に入りはテヅルモヅル。口ずさみたくなる名前もいいし、レース編みや刺繍のモチーフにしたくなるその姿もたまらない。
読了日:07月03日 著者:なかの ひろみ
おしらさま (京極夏彦のえほん遠野物語 第二期)の感想
昔持っていた文庫「遠野物語」、表紙が白馬に乗って疾走する娘だった。けれど記憶にある光景は少し違って、生剥ぎにした馬の皮を被せられた娘が、そのまま天に昇って神となるというもの。どのみち私が惹かれたのは、八房と伏姫を思わせる異類婚姻譚の薄暗い魅力と、恨んでいいはずの父親に養蚕という福をもたらした娘の、本性の見えない嘘寒さなのだが。本書はまだ表現がマイルドで、混乱を来しているおしらさまの伝承を再度復習したくなった。今回新たに目を引いたのは黙して語らぬ(のは当然なのだが)馬の本意で、語らぬこその恐ろしさを感じた。
読了日:07月15日 著者:京極 夏彦
大接近!妖怪図鑑の感想
【3歳10ヶ月】油彩のたしかな描写力。石燕あたりの古典をきっちり踏襲しつつ、デフォルメを効かせた愛らしいフォルム。そして何より、この迫力!贅沢かつ大胆に折り込みを使い、大判に刷られた唐傘おばけのゆるぎない存在感。これはすごい。胸の高まりを抑えられなかったのか、息子はこのページをそっと抱きしめ、頬ずりをしていた。なんなの。文章はやや一文が長く、自分で読むなら小学生以上向きかな。3歳児には言葉も難しいだろうけれど、生真面目に耳を傾けていた。以来何度も読んでほしがるお気に入りに。妖怪好きのお子さんにぜひどうぞ。
読了日:07月17日 著者:軽部 武宏
大出現!精霊図鑑の感想
【3歳10ヶ月】「大接近!妖怪図鑑」と一緒に借りてきた。あちらは古典妖怪ばかりだったけれど、こちらは知っているようで知らない〈精霊〉ばかり。目新しいなとは思ったけれど、ひょっとしてこれは創作なのかな。文章はやや渋めで、著者がそれぞれの精霊と出会った時の様子を、随筆のようにつらつらと語る。絵本ではあるけれど、読解力は小学校中高学年以上のものが必要かもしれない。とはいえ画の迫力は相当なもので、眺めるだけでも楽しめる。息子はお団子さまが特にお気に入り、うちの庭にもいるといいね。軽部さんの絵本、他のも気になる!
読了日:07月17日 著者:軽部 武宏
にょっ!: ぴっかぴかえほんの感想
クジラだと思って手にしたら、違ったような違わないような。シルエットから姿を想像して楽しむ絵本だけど、何でもありの投げっ放しなので、答え合わせをしたい人には不向きかな。私は昔から確かめられないものは否定できないと思っていて、幽霊も魔法も本心からは切り捨てられないまま人の親になってしまった。だからか本書が示してくる荒唐無稽な「○○かもよ」の振り幅は、そんな残念な視点までおおらかに許されているようで心地よい。間に本を挟んで息子とあれこれ話しながら思ったことは、やっぱりう○この形は最強!ということ。ゆるぎない!
読了日:07月22日 著者:ザキャビンカンパニー
よるですの感想
既読の中では「しんごうきピコリ」と並んでお気に入り。本書に描かれた闇の黒はとにかく濃密で鮮やか。悪夢との境界線も軽く越えていきかねない幼児が、ぎりぎり健やかな側へと踏みとどまる、その案内人は毛布が化けた獏。真夜中に訪れるトイレまでの大冒険。眠れないすうちゃんの悩ましい顔は、睫毛の一本一本まで悶々としている。うーん、素晴らしいわ。原画展で見て驚いたのは、この密度が印刷時の縮小によるものではないということ。原画はほぼ原寸大で制作されている模様、ちなみに手法は版画ではなくスクラッチのように見受けられました。
読了日:07月22日 著者:ザ・キャビンカンパニー
ほこほこのがっこうの感想
原画展にて甥っ子が購入。サインにキュートな虎を描いてもらった大切な本を、こころよく貸してくれた。廃校にすみついた埃のおばけ、ほこほこたちのお話。まっくろくろすけのお仲間かしら。バケツプリンや浴槽ゼリーは子どものころ思い描いてみたことのあるものだけど、本書のそれは宝石のようにきれいで美味しそう。舞台はもちろんキャビンカンパニーのお二人がアトリエとする由布市の廃校なのだけど、これが赤い屋根の小さな平屋の校舎で、写真で見てもとても愛らしい。アトリエ公開の機会は逃し続けているのだけれど、いつかぜひ見学してみたい。
読了日:07月29日 著者:ザキャビンカンパニー
だいおういかのいかたろう (ひまわりえほんシリーズ)の感想
原画展にて、キャビンカンパニーのお二人による読み聞かせといかたろうダンスを楽しむ。客席は子どもと大人が入り混じり、3歳の息子はノリノリで、3年生の甥っ子ははにかみながら、30代の私は息を上げつつよく動いた。このいかたろうダンスは公式動画が公開されているので( https://youtu.be/NVt8B0EuJic )読み聞かせのご参考にどうぞ。「ヘイ!」の掛け声では各々好きなポーズを決めましょう。お話も絵もシンプルかつダイナミック、湖の氷に閉じ込められた、大王イカのいかたろうの救出劇。季節は冬がお薦め。
読了日:07月29日 著者:ザキャビンカンパニー
あかんぼっかんの感想
原画展にて。講演を聞き、本作を描く契機があの地震にあったことを知る。混乱の中で分娩台に上り、地面が揺れるたびに陣痛が襲うという、その生々しくも力強いエピソードを忘れられない。これにより赤ん坊と火山を結びつけることの説得力は、否が応にも増す。けれども、デフォルメしつつも微細絶妙なリアルの愛らしさを残したこの作画は、やっぱり母親の視点があるからこそだよなあ。柔らかくて張りのある、息子のおしりを思い出して微笑む。可愛いわあ。赤子の生命力と生命欲の表現では、大友克洋「童夢」と並ぶくらい好きです。素晴らしい絵本。
読了日:07月29日 著者:ザ・キャビンカンパニー
読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:406
ナイス数:374
縄文の神の感想
稲作ー製鉄ー戦争の三点セットが登場する以前、石器時代の人々の精神性の高さには、中沢新一「カイエ・ソバージュ」以来あこがれを持っている。時代区分は違えどそこに重なる縄文の素朴で気高い精霊信仰が、どのように命脈を繋いできたかを、ヒモロギ、イワクラ、カンナビ、コトダマ、ムスヒの章立てで語る。なにぶん文字のない時代のことなので、読み味としては論考というよりも随筆に近い上に、自著の引用めちゃ多い。けれども目を惹かれる部分もあり、例えば食物神と殺害の関係性から、土偶は破壊されてこそ呪術が成る、という考察には納得する。
読了日:07月03日 著者:戸矢 学
へんないきものすいぞくかん ナゾの1日の感想
【3歳10ヶ月】飼育種数日本一の鳥羽水族館、そこの〈へんないきもの研究所〉がお送りする写真絵本。奇想天外な生き物たちは写真で見るだけでもおもしろいけれど、本書はさらに読み手を楽しませる工夫がちりばめられていて、繰り返し捲りたくなる。ダイオウグソクムシが持て囃された時は横目で見過ごしていたけれど、5年間も絶食し、食事や排泄がニュースになるその生態を知ると、途端に愛しさが湧いてくる。お気に入りはテヅルモヅル。口ずさみたくなる名前もいいし、レース編みや刺繍のモチーフにしたくなるその姿もたまらない。
読了日:07月03日 著者:なかの ひろみ
おしらさま (京極夏彦のえほん遠野物語 第二期)の感想
昔持っていた文庫「遠野物語」、表紙が白馬に乗って疾走する娘だった。けれど記憶にある光景は少し違って、生剥ぎにした馬の皮を被せられた娘が、そのまま天に昇って神となるというもの。どのみち私が惹かれたのは、八房と伏姫を思わせる異類婚姻譚の薄暗い魅力と、恨んでいいはずの父親に養蚕という福をもたらした娘の、本性の見えない嘘寒さなのだが。本書はまだ表現がマイルドで、混乱を来しているおしらさまの伝承を再度復習したくなった。今回新たに目を引いたのは黙して語らぬ(のは当然なのだが)馬の本意で、語らぬこその恐ろしさを感じた。
読了日:07月15日 著者:京極 夏彦
大接近!妖怪図鑑の感想
【3歳10ヶ月】油彩のたしかな描写力。石燕あたりの古典をきっちり踏襲しつつ、デフォルメを効かせた愛らしいフォルム。そして何より、この迫力!贅沢かつ大胆に折り込みを使い、大判に刷られた唐傘おばけのゆるぎない存在感。これはすごい。胸の高まりを抑えられなかったのか、息子はこのページをそっと抱きしめ、頬ずりをしていた。なんなの。文章はやや一文が長く、自分で読むなら小学生以上向きかな。3歳児には言葉も難しいだろうけれど、生真面目に耳を傾けていた。以来何度も読んでほしがるお気に入りに。妖怪好きのお子さんにぜひどうぞ。
読了日:07月17日 著者:軽部 武宏
大出現!精霊図鑑の感想
【3歳10ヶ月】「大接近!妖怪図鑑」と一緒に借りてきた。あちらは古典妖怪ばかりだったけれど、こちらは知っているようで知らない〈精霊〉ばかり。目新しいなとは思ったけれど、ひょっとしてこれは創作なのかな。文章はやや渋めで、著者がそれぞれの精霊と出会った時の様子を、随筆のようにつらつらと語る。絵本ではあるけれど、読解力は小学校中高学年以上のものが必要かもしれない。とはいえ画の迫力は相当なもので、眺めるだけでも楽しめる。息子はお団子さまが特にお気に入り、うちの庭にもいるといいね。軽部さんの絵本、他のも気になる!
読了日:07月17日 著者:軽部 武宏
にょっ!: ぴっかぴかえほんの感想
クジラだと思って手にしたら、違ったような違わないような。シルエットから姿を想像して楽しむ絵本だけど、何でもありの投げっ放しなので、答え合わせをしたい人には不向きかな。私は昔から確かめられないものは否定できないと思っていて、幽霊も魔法も本心からは切り捨てられないまま人の親になってしまった。だからか本書が示してくる荒唐無稽な「○○かもよ」の振り幅は、そんな残念な視点までおおらかに許されているようで心地よい。間に本を挟んで息子とあれこれ話しながら思ったことは、やっぱりう○この形は最強!ということ。ゆるぎない!
読了日:07月22日 著者:ザキャビンカンパニー
よるですの感想
既読の中では「しんごうきピコリ」と並んでお気に入り。本書に描かれた闇の黒はとにかく濃密で鮮やか。悪夢との境界線も軽く越えていきかねない幼児が、ぎりぎり健やかな側へと踏みとどまる、その案内人は毛布が化けた獏。真夜中に訪れるトイレまでの大冒険。眠れないすうちゃんの悩ましい顔は、睫毛の一本一本まで悶々としている。うーん、素晴らしいわ。原画展で見て驚いたのは、この密度が印刷時の縮小によるものではないということ。原画はほぼ原寸大で制作されている模様、ちなみに手法は版画ではなくスクラッチのように見受けられました。
読了日:07月22日 著者:ザ・キャビンカンパニー
ほこほこのがっこうの感想
原画展にて甥っ子が購入。サインにキュートな虎を描いてもらった大切な本を、こころよく貸してくれた。廃校にすみついた埃のおばけ、ほこほこたちのお話。まっくろくろすけのお仲間かしら。バケツプリンや浴槽ゼリーは子どものころ思い描いてみたことのあるものだけど、本書のそれは宝石のようにきれいで美味しそう。舞台はもちろんキャビンカンパニーのお二人がアトリエとする由布市の廃校なのだけど、これが赤い屋根の小さな平屋の校舎で、写真で見てもとても愛らしい。アトリエ公開の機会は逃し続けているのだけれど、いつかぜひ見学してみたい。
読了日:07月29日 著者:ザキャビンカンパニー
だいおういかのいかたろう (ひまわりえほんシリーズ)の感想
原画展にて、キャビンカンパニーのお二人による読み聞かせといかたろうダンスを楽しむ。客席は子どもと大人が入り混じり、3歳の息子はノリノリで、3年生の甥っ子ははにかみながら、30代の私は息を上げつつよく動いた。このいかたろうダンスは公式動画が公開されているので( https://youtu.be/NVt8B0EuJic )読み聞かせのご参考にどうぞ。「ヘイ!」の掛け声では各々好きなポーズを決めましょう。お話も絵もシンプルかつダイナミック、湖の氷に閉じ込められた、大王イカのいかたろうの救出劇。季節は冬がお薦め。
読了日:07月29日 著者:ザキャビンカンパニー
あかんぼっかんの感想
原画展にて。講演を聞き、本作を描く契機があの地震にあったことを知る。混乱の中で分娩台に上り、地面が揺れるたびに陣痛が襲うという、その生々しくも力強いエピソードを忘れられない。これにより赤ん坊と火山を結びつけることの説得力は、否が応にも増す。けれども、デフォルメしつつも微細絶妙なリアルの愛らしさを残したこの作画は、やっぱり母親の視点があるからこそだよなあ。柔らかくて張りのある、息子のおしりを思い出して微笑む。可愛いわあ。赤子の生命力と生命欲の表現では、大友克洋「童夢」と並ぶくらい好きです。素晴らしい絵本。
読了日:07月29日 著者:ザ・キャビンカンパニー
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