5月に読んだ本

5月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2108
ナイス数:442

プラネタリウムのふたご (講談社文庫)プラネタリウムのふたご (講談社文庫)感想
だまされる才覚がひとにないと、この世はかさっかさの世界になってしまう。星の見えない村のプラネタリウムで拾われ、彗星にちなんで名付けられたふたご。ひとりは手品師に、ひとりは星の語り部になった。(紹介文より)二十歳のころに出会って以来、心の中のくらやみに輝きつづける北極星のような物語。本を読んで感じたあれこれを感想にまとめるいつもは楽しいその作業を、本作に限ってはしようと思わない。何か一つを言葉にすると別の何かを取りこぼす、その大切な何かでこの物語は出来ている。私にもまだ、だまされる才覚はきっとある。
読了日:05月13日 著者:いしい しんじ
海獣の子供 (1) (IKKI COMIX)海獣の子供 (1) (IKKI COMIX)感想
海に棲むおおきな生きものが好きで、おおきな生きものがおおきな海を泳ぐ姿が好きで、けれども私はたいして泳げないので、彼らを水族館でしか見ることができない。それでもガラスで囲い込むうしろめたさをつい忘れて見入る。映画の予告で見た映像がすばらしく、同じように水族館好きの息子4歳と一緒に観に行けるかしらと、確認のために手に取った本書。本の中の画の中で泳ぐ海と空の姿、陸の上で息苦しそうな少女るか。字の読めない息子が覗きこんで、アメリカマナティ!ジンベエザメ!と喜んでいる。続きを買ってこなければ。
読了日:05月19日 著者:五十嵐 大介
麦ふみクーツェ (新潮文庫)麦ふみクーツェ (新潮文庫)感想
はじめて打楽器にふれた人間のように叩きたいというおじいちゃん。いしい作品はいつでも私に、はじめて物語を読んだ時の感動を思い出させてくれる。童話や昔話を思わせる朴訥な語り。ねずみ男にみどり色、へんてこな名前のひとびとは皆どこか懐かしい。けれど物語には時にしんじられないような悲惨なできごとが起こる、この現実のごとく。とん、たたん、とん、と麦ふみのように、ひとびとはこもごもの悲喜を踏みならす。弱い麦は土の肥やしになる、麦ふみにいいわるいはない。これはへんてこがへんてこさに誇りをもつための、力強いファンファーレ。
読了日:05月20日 著者:いしい しんじ
世界の真ん中の木 愛蔵版世界の真ん中の木 愛蔵版感想
人物と背景が分離することなく、全体で一枚の画として見せてくれることの嬉しさ。言葉よりも雄弁に、人も生かされている命のひとつにすぎないと教えてくれる。けれど本書が何より素晴らしいのは、その生かされている人がさらに、種を運ぶ役割を担っていること。そこに少年少女の出逢いと旅が繊細に重なること。樹上の天には死のみなもと、地中深い根の国には母なる海というのも、安易な逆転に終わらない面白さ。顔と体が乖離することなく、動きの中で心象を表して見せてくれることの楽しさ。そうだアニメって、絵が動くことの感動が始まりなんだわ。
読了日:05月22日 著者:二木 真希子
貝の子プチキュー (日本傑作絵本シリーズ)貝の子プチキュー (日本傑作絵本シリーズ)感想
山内ふじ江さんの装画に惹かれて手に取る。文は茨木のり子さん、版元は安心の福音館。ならばと借り出してきた本書を、海好きの息子は目敏く見つけて「これ読んで」。美しく愛らしい画とユーモラスな言葉選びにうきうきと読み進める、ここまでは想定内。けれどもラスト、プチキューを待ち受ける運命には愕然とした。ここでつい狙いやメッセージを探ってしまうのは大人の悪癖か、息子はさして驚いたふうもなく「プチキューは海の子だからおいしかったの?」と。そうだね、潮のあじがしたのかな。カニの子もきっと同じあじだろうね。見上げれば星月夜。
読了日:05月22日 著者:茨木 のり子
たそかれ 不知の物語 (福音館創作童話シリーズ)たそかれ 不知の物語 (福音館創作童話シリーズ)感想
正直前作とくらべてつくりが甘く雑な印象は拭えないものの、八寸のかわらぬ愛らしさと成長した麻の姿はやはり見ていて嬉しく、再会ついでに言葉まで交わせるなんて、表紙絵ちょっとなあなんて文句言ってごめんね不知、という気持ち。今回は聞こえない音楽推しが全面に出すぎていたけれども、校長先生の話以下戦争のふれかたには胸を打つものがあった。身近な人を亡くすと幽霊があんまり怖くなくなる、むしろ化けてでてこい!と願ってしまう。不謹慎という考え方はあまり好きではないけれど、むやみと不気味がる気にはなれなくなる、それは確かだ。
読了日:05月23日 著者:朽木 祥
海獣の子供 (5) (IKKI COMIX)海獣の子供 (5) (IKKI COMIX)感想
予定をすべてなげうち休日一日使って一気読み。感覚的なようでいてかなり理屈っぽいお話。理詰めのパースやトーンワークに頼らずほぼペンの走りだけでこれだけ魅せてくれるなら、ここまでの文章化は蛇足のような。つい文化人類学や民俗学、心理学や自然科学の読み齧りが脳裏を掠めてしまう。けれどもミクロとマクロを重ねて解き起こす海と宇宙と胎内の誕生という現象、ただそれだけを描ききって終えるこの潔さは心地よい。大海原を水槽のように見渡す神の目線ではなく、それに翻弄される少女の目線で描かれた巨大な海獣たちの姿がとても良かった。
読了日:05月29日 著者:五十嵐 大介

読書メーター

コメント

人気の投稿